恋するタブリエ

マイナビ出版ファン文庫より紙書籍化決定!
紙書籍版タイトルは『レストラン・タブリエの幸せマリアージュ』となります。

恋タブ的ワインと食のコラム

 共幻社様からもご案内いただいておりますとおり、このたび「恋するタブリエ」は大幅改稿、改題いたしましてマイナビファン文庫様より紙の書籍を出版していただくことになりました。タブリエに関わってくださるすべての方に本当に感謝しております。

 

 二年前にコンテスト用に書いた小さな話がこんなに幸せな展開をみせるとは!

 

 共幻社編集長高橋様には大変お世話になりました。たった二つの短い小説から私の力(非力ですが)を信じてくださり、励まし引っ張ってくださいました。自分の書いたものにこれほど思いを込めて読んでいただいたことはありません。この場をお借りしてお礼申し上げます。

良い読み手を得ることというのは、書いている者の力を数倍にも引き上げるというのを実感しました。今回はワインや料理の話ではなくて、このことを書きたいと思います。


 

 今はたくさんの小説投稿サイトがあって、プロの方もアマチュアの方も自由に作品を発表できますね。せっかく書いたのだから、誰かに読んでもらいたい。そういう欲求が満たされるのはいいなと思います。

ただ、自分の書いたものを投稿サイトでより多くの人に読んでもらいたいと思えば、横のつながりを作る努力も必要なのかなぁ、というのが投稿サイトをちょっとかじってみた私の印象です。

たくさんある投稿作品の中から無名な自分の小説を読んでみようと思ってもらうまでが大変。

交流が上手で、読書スピードが速い方には投稿サイトで作品を発表するのが合っているかなと思います。読み手=書き手でもあることが多いので、読んでもらいたいならば自分も他の方の作品を読まないといけませんから。

ネットの交流が得意でなく読書スピードが遅い私は、小説投稿サイトが上手く使えなくて少しストレスにも感じました。

 

共幻社さんのコンテストを見つけたのはそんな時です。

自分の話を読んでくれて面白いと言ってくれる人が出来たのは、とてもうれしくありがたいことでした。

以前文章教室に通っていた時のことを思い出しました。生徒は五人ほどで、私の他は年配の女性ばかり。プロ作家を目指すような養成講座みたいなものではありません。先生は私の書くものを「面白い」と言って読んでくれました。たくさんの人に読まれなくてもただ先生に読んでもらえるのがうれしくて書いていました。

投稿サイトの読み手の方よりきつい感想をズバリと言われることもありますが、編集の方や教室の先生は小説をより良いものにしたいという気持ちが書き手と同じ方向を向いているので心強いです。

 

作品の最初の読者、良き読み手を見つけることは必ず書く者の力になると信じています。

 投稿サイトで活動される方も、サークルで活動されている方も、コンテストに応募する方も、それぞれの方法でその相手を見つけられればいいなぁと。その一人が良いと言ってくれたものはきっとたくさんの良き読み手を繋げてくれるはずですから。

 レストランタブリエの4巻で、レストランにワインを持ち込むお客さんの話を書きました。ワイン通とのちょっとしたトラブルで頼子が少し前を向けるようになるというものです。

これ、実はもっともっと恐ろしい私の経験から考えだした話でした。

 

そもそも、レストランにおいてワインを持ち込まれることは歓迎できることではありません。その理由につきましては4巻に書きました通り、ワインを預かるスペースや保管から抜栓までのケアをする手間がかかるということと飲料の売り上げが伸びなくなるということです。

 

調理師専門学校で和食かフレンチか選択するコースに迷った学生が、「儲けを一番に考えるなら和食にしなさい」とアドバイスされたという話を度々聞きました。

 

フランス料理は食材の原価がとても高いのです。

フォワグラ、キャビア、トリュフ、オマールエビ、何とか産仔羊、鳩、鴨……。

単純に使う食材だけで比べてみましたら、シンプルに盛られたお野菜の和え物一つで一品になる和食よりも、フランス料理は儲けにくい料理ということになるわけです。

フランス料理において、料理だけで十分な利益を得ようと思えば、コースのお値段は跳ね上がってしまいます。それではお客さんに来ていただけません。ですから、比較的原価率の抑えやすいワインの売り上げが重要になるのです。

 

フランス料理は食器類にもお金がかかります。

前菜用、魚用、肉用、デザート用……違う形のナイフとフォーク。全部銀製だったとしたらどれほどかかると思いますか? 金額の問題だけではありません。気を抜くとすぐに酸化して変色する銀食器にどれほど気をつかい、手入れをするスタッフの手が銀磨きの薬剤でどれほど傷んでいることか。

和食でどんなに高級な箸と箸置きを使っていたとしても、かかるコストと手間は銀のナイフフォークには敵わないはずです。

 

すみません……話が逸れてしまいました。

持ち込みワインで危うく命を落としそうになった経験を書こうと思っていたのでした。

 

そのお客様は最初一人で来店されました。五十代後半から六十代前半といったところの白髪の紳士です。高級そうなスーツをお召で、若い頃はさぞかしオモテになっただろうと想像できるお顔立ちでした。

「この近くで会社をしとるんや。こんなとこに店があったとは知らんかったな」

 そう言って名刺を置いて行かれました。確かに名刺の肩書は代表取締役社長です。

 この紳士は初めての来店から、週に一、二度ディナーに来てくださる超常連客になります。お一人のこともあれば、超絶美しい若い女性を連れてくることも同年代ぐらいのお友達を連れてくることもありました。

 
 先に申し上げておきますが、この紳士はお金持ちですがけして料理通やワイン通という感じではありません。肉は牛肉しか食べませんし、前菜はカルパッチョと決まっておりました。

 

紳士が食事をしている間、紳士の会社の社員の男性が店の外で待機しているらしいとわかったのはしばらく経ってからです。社員の男性は紳士のタバコが切れそうになると、いつも絶妙なタイミングでタバコの補充にやって来られました。その社員の男性が、レンズに色が入った眼鏡をかけて柄物のセーターを着ていたりして、普通のサラリーマンの雰囲気ではないのです。

 

あれ? もしかして、この方々は……。

 

予想が確信に変わったのは、紳士が六名程度で来店した日です。メンバーの一人の白いシャツに、背中に彫り込んだ青緑色のイラストが透けて浮かんでおりました。

「そらあかんわ、スケスケやないか。上着着とけ」

 他のメンバーに注意されて渋々その方は上着を羽織りましたが、「ワシはもっと生地の厚いシャツを着とる」とか、「シャツの中に濃い目の肌着を着とる」とか口々に自分なりの工夫を発表し始めて、ああやっぱりそういうお仲間なのだと。

 

 私は緊張しました。

 なぜなら、私にとって明らかに爆弾となるブツを紳士から預かってしまっていたからです。

 そうです。ワインです。

こんな怖そうな人たちの前であれを開けるのかと思うと恐ろしくて。

 

事前に紳士の会社の男性が貸し切りの予約に来店され、持ち込みのワインを持って来られました。

ボルドーの有名銘柄の古酒でした。贈答品らしく木箱に入っており、おそらく手に入れた時からずっとその箱に入れたまま保存しておられたものでしょう。箱の中に液漏れが見られました。


 手提げに入れて無造作に持って来られたのですから、当然ワインの液中に澱が舞い上がっております。予約の日までに完全に澱を落ち着けることは難しい状態でした。

「ワシのとっておきのワインを用意しといた」

 そう紹介されてしまったので、私は紳士に恐る恐る申し上げました。

「旨味成分(澱のことです)が大変多いのでお口に少しザラリとした感覚があるかもしれません」

「そうか、そうか、旨味が多いか」ご満悦で、「注いでくれ」と促されます。

ええい、もういくしかない。

腹をくくって栓を開け、ソムリエとして少しの味見を願い出ました。

 

あ、美味しい。

 

口に含むと少し澱がザラつきますが、さすがは格付けワイン、角の取れた渋みが上品で美味しかったのです。それで安心してサービス出来ました。

 

ところが。

保存の状態があまり良くなかったせいでしょうか、空気に触れてからの劣化は思っていたよりはやく、グラスの中でどんどん味わいが落ちていきます。すると、紳士の隣に座っていた人が、

「高級ワインは二日くらい前から栓を開けとかなあかんらしいですよ」

 と紳士に言いました。

「なんやて? ほな、開ける時間を間違えたいうことか」

 

 思ってもみないところで、突然爆弾の導火線に完全に火が付いたのです。

小一時間もしないうちに酸化してしまったワイン、二日も前から空けていたら飲めたものではありません。

なんてことを言ってくれるんだ。心では相手の胸ぐらを掴む勢いで怒りを感じておりました。

しかし、私には何も言えませんでした。

言えるわけがないじゃないですか!!! 怖すぎるでしょう!!!

 

「ワシに恥をかかせよって」

 紳士が私に凄み、

「まぁまぁ、若い子ですし、これから勉強していくでしょうから、ここはひとつ許してやってください」

 他のメンバーが紳士にそう言ってなだめてくれました。

 

 映画でしたら切られてしまうところでしょうか。

 

 内容は全く違うものになりましたが、タブリエのあのエピソードはこの経験から思いつきました。物語より事実の方が数倍恐ろしい話です。

ちょっと面白い後日談もあるんですけど、もしかしたらこの先、その経験が何か別の物語に使えるかもしれませんのでここではお話ししないことにいたします。イヒヒ。

 

大切なワインをせっかくだから美味しい料理と合わせたい。その気持ちよくわかります。ワインをレストランに持ち込むときは、持ち込むお店の条件もしっかり聞いてみてください。通じ合えれば、ワイン担当者はきっとあなたのワインを一番美味しい状態で出したいと思い、最良だと思う扱いをしてくれます。

プロならば、命がけで、たぶん。

「休みが合う人がいないから」と言い訳をしておりましたが、二十代中ごろの私には気軽に誘える友達があまりおりませんでしたし、彼氏もおりませんでした。

 浜野です。

 

 そんなわけで、何でも一人で楽しんでやろうと思っておりました。一緒に楽しめる人がいなかったから何も出来なかったとは意地でも言いたくなかったんです。

 

 カラオケやスポーツジム、映画、ボーリング、バッティングセンター、ビリヤード、ボルダリングジム、音楽教室、手芸教室、文章教室、エステ、釣り、海外旅行……。けっこう一人でも出来ることはありました。一人じゃない方が楽しかっただろうな、ということも多いですけど……。

ボルダリングジムに初心者一人って本当に寂しいですよ。動けなくて、低い壁に一人でセミみたいに貼り付いてるんです。あれはレッスンを受けてからの方がいい。

 

 レストランにも一人でよく出かけました。勉強も兼ねてフレンチとイタリアンに行くことが多かったですが、立ち食いの蕎麦とか並んで食べる餃子とか気軽なお店も。

 

もちろん誰かと一緒は幸せです。けれど、もしかしたらレストランというものを一番じっくり味わえるのは一人飯かもしれません。

 

 店の内装や家具、食器、カトラリー。料理を待つ間の時間に、店のこだわりをじっくり見ることができます。

BGMなど、誰かと話をしていたら気にとめなかったりするものも、一人なら耳に入ってきやすいものです。

好きな曲が流れていたりするとそれだけで自分とお店が合っているような気がしてうれしかったり。なぜこの曲? っていう選曲だとそれもまた考えるのが楽しく、お店の人に質問してみたりして。「あ、休憩時間にかけてた有線放送かけっぱなしでした。すみません」なんていうこともありました。

 

一人で食事に行くと、サービスの人の動きを見るのも楽しいです。

お店の人と話がしたい人なのかそっとしておいてほしい人なのかを感じ取って、お客さんによって対応をさりげなくかえていたりするのを見つけるとうれしくなります。言葉にされていないのに、タイミング良くお客さんの求めていることに応えられるサービスマンはカッコいいなぁと思います。

 

一人飯は、友達や彼、彼女と楽しむ食事とはまた違った楽しみです。

 

フランス料理一人飯なんて贅沢。子育て中のお母さんはおっしゃるでしょう。

「子供は連れていけますか?」

 子供連れで食事に行く時は、まずこれを確認しなければなりません。

「大丈夫ですよ」と言ってくれるレストランでも騒ぎ過ぎれば注意を受けますし、他のお客さんの迷惑にもなってしまいます。

これはレストランにとっても悩ましい問題です。

 

「子供」と言いましても、じっと椅子に座っていられる子もいれば好奇心旺盛で動き回りたい子もいて、大人顔負けに食欲のある子もいればメニューの中に食べられるものを一つも探せない子もいます。

 

 気をつかう必要がありそうなレストランへ食事に子供を連れて行く場合、その子がそのレストランで食事を楽しめるか子かどうかというのが重要ではないかと私は考えます。

 食べることが好きで、少し背伸びして静かに大人と同じものを食べられる子ならば問題ないですよね。

自分の子がそこで楽しく食事が出来るか、親である自分も子供と落ち着いて食事が出来るか。レストランに行く前に想像してみる必要がありそうです。想像して、親子で疲れて帰って来る姿しか思い描けないならば、その子をそのレストランに連れて行くのはまだ早いかもしれません。

 少しおしゃれして行くようなレストランで一緒に食事できるようになったら、「うちの子成長したな~」と感動するのでは? 当分の間フレンチなど連れていけない子供を持つ私はそんな期待をしています。

 

 お客さんが楽しんでレストランで食事が出来るように、お店は一生懸命考えています。一人でも、二人でも、大人数でも、子供連れでも、気持ちよくサービスを受けて食事が出来るように、お客の側でも考えてみると楽しいですよ。

 

 一人で食事に行く場合、チーズフォンデュのお店だけはお気を付けください。今までにたった一度だけ一人飯をお断りされました。チーズフォンデュは一人では楽しめないお料理みたいです。二人前からのご用意でした。……確かに、一人チーズフォンデュはちょっと寂しいですか……。挑戦される場合は事前にご確認を。

 桜満開ですね!
 今年は開花が少し遅めでしたが、小学校などは今頃が入学式のところも多いのでばっちり満開の桜と記念撮影できたでしょうね~。

 新しい生活をスタートされた皆様、おめでとうございます。

 こんにちは、浜野です。

 コラム2回目。今回はマリアージュについて語ってみたいと思います。\(^o^)/

                 ◆◆◆◆◆

 ネットの情報によりますと、今現在は過去最大のワインブームの真っただ中なんだそうです。(
2012年から第七次ワインブームというらしいですね。終焉を告げる記事が見当たらないのでまだこの中にいるということでしょう)長くブームが続いている状態は、もうワインというものが日本に定着しているということのように思いますが。

ブティックのようなお洒落な佇まいのワイン屋さんも街に馴染んでいますよね。

 

ワインを勉強していた時に、私は初めてマリアージュというフランス語に出会いました。「結婚」という意味の他に「組み合わせが良い」とか「相性が良い」というような意味があるこの言葉、これも今では特にワイン用語というわけではなく広く使われて浸透しています。

白っぽいソースには白ワイン、色の濃いソースには赤ワイン。ワインの産地の郷土料理を合わせるとよい。料理の味わいの軽い物には軽めのワインを、しっかりした味わいのものにはずっしりしたフルボディなワインを……。

相性の良いワインと料理の組み合わせは本でもネットでもたくさん紹介されています。

 

勉強不足なワイン好きといたしましては、「相性ぴったりでなくても料理とワインを楽しむ方法」を押していきたいと思います。タブリエの話の中で頼子がどんなワインと料理でも合わせられる部分を探すというように書きました。それがこれ。

 

要は「いいとこ探し」するということ。

 

レストランでは数種類の料理が出てきますが、すべてに合うワインをボトルで選ぶのは難しい。例えば、前菜に合わせて白ワインが飲みたいけれど、メインはがっつり赤いソースの肉料理な場合。

コクのある濃い白ワインならば、ちょっと温度が上がってくると甘みとまろやかさが感じられるようになってくるので、前菜の時は冷やし気味にしておいてワインのコクが増して感じられるときに肉料理を食べてみてください。肉の旨味に負けない白ワインの力に気づいたりします。

フルーティー爽やかな白ワインならば、肉料理でまったりした口中を、ワインを口に含むごとにリセットさせるような感覚で楽しむのもいいと思うのです。フレンチのコースの合間にグラニテというお口直しのシャーベットが出てくることがありますが、それと同じような効果です。

 

小さなことでも良い部分をみつけていけば楽しめます。ワインと料理、絶対ダメな組み合わせの方が実は見つけにくいんです。

 

 その昔、最悪な組み合わせのワインと料理というのはどういうものかということを実際に体験する機会を当時の男性上司が作ってくれたことがありました。

魚介のカルパッチョに合わせて用意されたのは濃い味わいの赤ワイン。教科書が唱えるのとは正反対な組み合わせです。赤ワインでも少し軽めの良く冷やしたものなら合いそうですけど……。

「合わないでしょ、これは」

「まぁまぁ騙されたと思ってやってみ」

 で、騙されまして。何とも言えない生臭い後口がいたしました。(後で調べましたら、赤ワインの鉄分と魚介が組み合わせられることで発生する臭みだそうです)

 

ところがここで、一緒に騙されていたはずの先輩(女性)が、

「うわ~、磯の香りがする~」と感激しはじめます。

 

「「え?」」

 マリアージュ失敗例というのはこういうことだと言わんとしていた上司も先輩のリアクションは想定外だったようでした。

「や、これ、あ、そう? 悪くなかった? テストでは不正解なやつやけど?」

「あ、そうなんですか、私は好きです。お魚を食べてるって感じがして美味しいです」

 先輩は全く気にせず生の魚介と赤ワインで海を感じておりました。見ているこっちまで楽しくなるような幸せそうな顔をして。

 

 硬いこと言わずに好きな人と楽しく飲んで食べることが最高のマリアージュを生むんです、きっと。

 

ああ、そうそう、生臭さも磯の香りに変えてしまうこの先輩、もともと一緒にいるだけで人を安心させてくれる天使みたいな人です。お酒が好きで知識もあるのに資格など取ろうとはしませんでした。ワインの蘊蓄など無くても運ぶ料理を何倍にも美味しく感じさせるようなサービス人です。彼女に会いに食事に来るファンもたくさんおりました。

当然女性としても魅力的でそれはもう羨ましいくらいモテモテ。お誘いを受けても断ってばかりだった彼女が選んだのは十以上年下の料理人でした。後に彼女は言いました。「お付き合いするなんて絶対あり得ない相手だと思ったから一緒に出掛けてみたんだけど」

 今でも彼女は夫となった彼のお料理を運んでいます。

 意外な組み合わせも楽しんでみれば自分だけの幸福なマリアージュが潜んでいるかもしれません。


 恋するタブリエというお仕事と恋愛の話を書かせていただいております、浜野と申します。
 コンテストのために書いたたったひとつの短編から、連載をさせていただくことになるなんて夢のようです。機会を与えてくださいました共幻社さんと読んでくださいますすべての方に感謝しております。
 フランス料理のレストランが舞台の話を書いておりますので、恋するタブリエ的ワインと食のコラムをこれから始めてみたいと思います。
 よろしければお付き合いください!



はじめに。(言い訳含む)

 

 恋するタブリエのお話でもプロ泣かせのワイン好きを登場させていていますが、ワイン好きな人が蘊蓄を語り過ぎて倦厭されることはよく聞きます。ワインだけじゃなく、本でも芸能人でもアニメでも音楽でもスポーツでも、他の人よりちょっと踏み込んだ知識があればどんなことでも語りたくなるだろうと思いますけど。楽しい食事の席で、飲んでいるものに硬い解説を付けられたら、まぁ鬱陶しいですかね。

その昔ワインの勉強をしていた時期がありました。体質がアルコールに合わなくてやめてしまいましたが、資格は持っています。そんなわけで、「普段ワインって飲まないんだけど、どんなワインがお勧め?」と聞かれることが度々。

この質問に答えるの、本当に難しい。


 気軽にお勧めできるような価格のワインの名前は産地の名前だったりブドウ品種の名前だったりして、同じ名前のワインをいろんな作り手が作っています。同じ名前のワインでも違う生産者が出しているものなら当然味が違います。同じ作り手でもブドウの木が育った年によっても変わってしまいます。

 なので、紹介するとしたらワイン名と作り手の名前、収穫年まで言わねば自分の思っている一本を表せません。ワインの名前に生産者を並べて「収穫年によっても味が違いますけどね」と一言付け加えることになります。そうでないと、違うものを飲まれて「あの人に教えてもらったワインを飲んでみたけどいまいちだった」ということになってしまいますから、悔しいじゃないですか。


 そうするとだいたい、「生産者ってそんなに大事なの?」という質問を招き、蘊蓄など言うつもりはなくてもワインというものについてちょっと語ってしまう羽目に陥ります。


「やっぱりワインって難しそう」

 最後は相手のその言葉で終わって、申し訳ない気持ちになったものです。

 
 硬いお酒だと思われて避けられるのはもったいない。

 やっぱりワイン屋さんに行って相談して買うのが一番間違いないという当たり前な正解に気づいてからは、ワイン屋さんを紹介するようにしました。

 
 ところがある時、「ちょっと前にワイン屋さんで勧めてもらったワイン、ダメだった」と言ってきた人が。運悪く劣化したボトルに当たっちゃったかな(劣化したワインについては恋するタブリエ
4巻をぜひ読んでみてくださいね!)と思い、話を聞いていると、

「最初は美味しいなと思ってたんだけど、だんだんあんまり美味しくなってね」

「え? 飲んでる最中に?」

「そうなの、申し訳ないけど半分くらい捨てちゃった」

 
 酸化して劣化は仕方ないけど飲んでいる間にそんなに急激に味が変わるなんて……。聞いていたワインの購入金額からすればそんなにデリケートなワインじゃなさそうですけど? 

「何人くらいで飲んでたんですか」

「一人で。うちの家族ビールしか飲まないから、気が向いた時にチビチビ一人で」

「待って、待って、それって期間どれくらい?」

「うーん、3カ月くらいかな。飲まない日もあるし」

「それはダメです……」

「そうなの?」

 
 ワインは醸造酒だから、開栓してしまえばアルコール度数が高い蒸留酒ほど日持ちしません。ワインによっては開栓してから2週間経っても美味しいというものもあるようですが、だいだい3日から1週間以内には飲み切った方がよいと考えられているようです。空気に触れないように保存した方がいいですし……。


 あーあ、結局あれこれ話してしまいました。少ない知識のクセに。


 ワインってなんか、語らせる。そういうお酒なんだと思います。


 ただ、ワインに興味のない人にすればその語りはうんざりするもの。とりわけ高級ワインの話などはなおさら。

 
 1本100万円以上するようなワインでも、ボトル750mlを楽しむには多くてせいぜい10人までです。高価なウイスキーやブランデーなどの蒸留酒のように日数を掛けて少しずつ楽しむことも、1匹5千万円で取引されても1万2千貫の握りずしが出来るような高級マグロのように大人数の口に入るわけでもない。
 

高級ワインは短い時間に少人数で楽しんでさっと無くなってしまう贅沢な飲み物です。語ってもらっても多くの場合は飲ませてもらえるわけじゃないし、自分で買って飲むこともそう簡単ではないわけです。ドラえもんに出てくるスネ夫の話を聞くのび太みたいな気持ちになります。


 ワインは人に語らせる。
 けれど、ワイン話は共感しにくいことが多いものです。特にお金持ちのワイン通には気を付けてもらいたい。


 ですから私は楽しく聞いていただける程度にタブリエに出てくるワインや料理についてここでお話したいと思います。え? これだけ言っておいて語るの? ってお思いでしょう。ご安心ください。私の話はけして通なそれではありませんから。



ブログの機能が使いこなせておりません。何とも味気ないページになってしまって……申し訳ありません~。それも含めて慣れていきたいと思いますのでよろしくお願いします(*_*;。浜野




 

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